12「修道院まで、ひと歩き」
本格的な山のシーズンが始まる前の、ちょっとした足慣らしに。そんなつもりで、ミュンヘン近郊の修道院へハイキングに出かけました。
ドイツをはじめヨーロッパには、数えきれないほどの修道院があります。世界遺産に登録されている広大で荘厳なものから、山の中にひっそりと建つ小さなものまで。
今も修道士や修道女たちが暮らしている現役の修道院もありますが、時代を経て学校やホテル、ケア施設として新しい役割を持ちながら使われている場所もあります。
【修道院の例】
左はビールが有名なアンデックス修道院。ミュンヘンからアクセスしやすく自分もよく訪れます。人気の場所なので、夏場や週末は賑やかです。
右は旅先で宿泊した修道院。療養滞在の施設があったり、良心的な料金なので近くの工事現場の労働者が利用していたり、でもとても静かでした。
修道院は、世俗を離れて祈りと静寂の中で暮らすための場所ですから、たいてい人里離れた自然の中にあるため、ハイキングの目的地にぴったりなんです。
さらに南ドイツでは、しばしば修道院の敷地内や隣にビールの醸造所があって、レストランも併設されていたりするので、ハイキングだけでなく、サイクリングやドライブで立ち寄るのにも人気の場所になっています。
歴史的に修道院とビールの結びつきは深く、南ドイツでは長いあいだ、修道院がビール造りの中心的な役割を担ってきました。中世には、断食の期間中でも液体の摂取は認められていたことから、栄養価の高いビールが修道士たちの大切な栄養源になっていたそう。「液体のパン」なんて呼び方もあるくらいです。
ミュンヘンを代表するビールブランド「パウラーナー」も、修道院を起源としていて、修道士の姿がロゴマークになっています(もちろん現在は民間のメーカーです)。そういえば、ミュンヘン(München)という地名も、修道士たち(Mönche)という言葉に由来しているんですよ。
話が逸れましたが、ハイキングの目的地あるいは休憩地点として絶好の存在でもある修道院。丘を越え、森を抜けた先に修道院の姿が見えてくると、昔の巡礼者もこんなふうに旅していたのかな、なんていう思いがよぎります。
さて、今回向かったのはロイトベルク修道院(Kloster Reutberg)です。いつもと違うところに行きたいなと思い、地図アプリ上で探しました。
ミュンヘンから南へ電車で1時間のシャフトラッハ駅からスタートし、修道院までは徒歩で1時間ほどです。
駅から10分ほどで、林の中に入ります。Forst(フォルスト=人工林・産業林)なのでトラクターも通れる、まっすぐな歩きやすい道があります。
林を抜けると平坦な牧草地が広がっていました。
景色は良いけれど、舗装された道はちょっと足に負担です。
修道院は小高い丘の上にあり、その麓に小さな村があるのですが、その村が思いがけず素敵な雰囲気でした。
特別なものはなく、農家が並んでいるだけなのですが、どこも綺麗に手入れされていて、上品ささえ感じます。修道院の気風がここまで及んでいるのでしょうか。
村の中にいた頭の黒いヒツジたち。
そのままドラマの撮影ができそう。
消防署も何だか可愛いらしい佇まい。
村を抜けると、修道院が見えてきました。
こういう風景はずっと昔から変わらないのでしょうね。
ミツバチの巣箱が置いてありました。
修道院のハチミツ、惹かれますよね。
丘の上のロイトベルク修道院。フランシスコ会の女子修道院です。
ずっと平坦な道のりで、最後だけ少し登って到着。
どこの修道院にも大なり小なり庭があります。ハーブや野菜、果樹などが植えられています。
教会の入り口。
現役の修道院なので、内部を見学できるのは教会のみ。
祭壇が修道士や修道女の像で飾られていますね。
裏手にビールの醸造所があります。
では、お待ちかねのレストランへ。
アルプス方面を望む南向きのテラスが設けられています。
天気は良かったのですが風が冷たかったので、室内に座りました。
ここのレストランは、田舎風ではあるもののおしゃれな雰囲気。
地元のお金持ちマダムみたいなお客さんもいました。
ビールはノンアルコールのヘレスを飲みました。
食事はチーズ入りのヴルストサラダ(ハムのマリネです)。
定番の軽食メニューですが、ハムもチーズも美味しかったです。
しっかりした肉料理なども美味しそうだったので、機会があればまた食事のためだけに立ち寄りたいです。
ずっとのんびりしていたい所ですが、また1時間歩いて駅まで戻らなければなりません。(バスもありますが、ハイキングに来たのですからね。)
目を見張るような見どころはないものの、牧歌的な風景が広がる、気持ちの良いハイキングコースでした。
ドイツ在住スタッフ・チノ